契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 悶々としながら車を走らせ、空港に到着し駐車場に停める。エンジンを切って小さく深呼吸した。

「行くか」

 車を降りたら気持ちを入れ替えなければならない。今日は国内線二便の乗務予定だ。その日のシフトによって出勤時間は違うが、いつもフライトの二時間以上前には空港に着くように来ている。

 機長が出勤してくる前に目的地までのルートや気象情報を確認しておく。その後、機長とも綿密に確認を行い、フライトプランを決定する。

 それから飛行機に乗り込み、整備士やCAとブリーフィングをして出発準備に入るのだ。
 今日は館野キャプテンとバディを組む予定となっていた。

「おはよう、真田。今日は一段を清々しい朝を迎えられたんじゃないか?」

 やって来るなり、上機嫌で俺の背中をバシバシと叩く館野キャプテン。

「なんですか、藪から棒に。いつもと変わらない朝だと思いますけど」

 むしろ凪咲の様子がおかしくて、憂鬱な朝を迎えた。しかしそんな俺の事情など知る由もない館野キャプテンは、ハイテンションで俺との距離を詰めてきた。

「隠さなくたっていいって。やっと元サヤに戻ったんだろ? 再婚でも結婚式は挙げるよな? 仲人は俺に任せておけ」

 さっきから館野キャプテンはいったいなにを言っているんだ?
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