契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「本当に朝からどうしたんですか? 体調が悪いなら、スタンバイのキャプテンに乗務していただけるように手配しますけど」

「真田こそどうしたんだ? 俺は事情知っているんだからもっと浮かれてもいいんだぞ。一昨日、鮎川ちゃんと熱い夜を過ごしたんだろ?」

 ボソッと耳打ちされた言葉に目を見開いた。

「どういうことですか? 俺と凪咲は熱い夜を過ごしたって。一昨日は凪咲に急用が入り、会っていませんけど?」

「えっ!? そっ、そうだったのか!?」

 さっきとは一変し、館野キャプテンは狼狽えだす。どう見ても怪しい姿に詰め寄る。

「その様子だと館野キャプテンが、凪咲の態度が急におかしくなったことと関係しているようですね。一昨日、凪咲となにがあったんですか?」

「なにって……こればっかりは俺の口からは言えない」

「なぜですか?」

「言えないからだ」

 一向に口を割ろうとせず、挙句に「ほら、さっさとフライトプランを立てるぞ」と言って話題を逸らした。

 たしかにそろそろ立てないとまずい時間だ。これから乗務がある以上、一旦忘れてフライトに集中しよう。
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