契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「失礼なやつだな。結婚願望は昔からあるわ。ただ、この人だって相手と出会えていないだけ。言っておくが俺も運命の相手が現れたら一途に愛す派だからな」

 そんな姿が想像できなくて顔をしかめると、俺が考えていることがわかったのか彼は片眉を上げた。

「お前より相手を一途に想う自信があるぞ! いいか、そのうちお前から社内一の愛妻家の称号を奪ってみせるから覚悟しておけよ」

 なにをそんなに張り合う必要があるのか……。だけどこういったところも館野キャプテンらしい。彼の言動には呆れることもあるし、イラっとすることもある。でもどこか憎めないし、なにより仕事面では頼りになり尊敬できる上司だ。

「わかりました、覚悟しておきますね」

「おい、バカにしているだろ?」

 適当にあしらって言えば、館野キャプテンは言い返してきた。

「していませんよ」

「いや、その顔はしている顔だ。まったく、こんな可愛くない部下を持って俺はなんて不幸なんだろう」

「俺は館野キャプテンのような上司に恵まれて、幸せだと思っていますよ」

 素直に思っていることを伝えたものの、彼は疑いめいた目で俺を見る。
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