契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「お前のそういうところが可愛くないんだぞ。まったく、俺にズケズケと言える度胸があるんだから、さっさと鮎川ちゃんに聞けばよかったものの」

「特別な存在には、いつだって臆病になりますよ。きっと館野キャプテンにもそういう相手ができたら、俺が言いたいことがわかると思います」

「とことん嫌味なやつだな」

 嫌悪感を露わにして、館野キャプテンは残りのソーキそばを勢いよく啜る。

「とにかくだ、運命の相手と出会えたお前は恵まれているんだから、なんとしても鮎川ちゃんとうまく関係を築いていけよ」

「言われなくてもそのつもりです」

 再会できてから凪咲への想いが日に日に強くなっている。これほどまでに心惹かれる相手とは二度と出会うことなどできないだろう。

「結婚式には絶対に呼べよ」

「はい、その時はぜひ仲人をお願いしますね」

「あぁ、俺以外のやつにやらせるなよ」

 お互い笑みを零し、午後のフライトについて話をしながら空港へと戻った。
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