契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

あなたはいつも私を正しい道に導いてくれる

　休日にやって来たのはＡＴＭ。貯金残高を見ては深いため息が零れる。

　父と偶然にも再会してから、二週間近くが過ぎた。やはりあれから父は二度私のもとを訪れ、お金を要求してきた。

　ＡＴＭをあとにしてスマホを見ると、父からメッセージが届いている。またお金が必要だから、取りにいくという内容だ。

　一回だけという約束だったのにこれでもう四回目。さすがにこれ以上は渡すわけにはいかない。私が生活できなくなってしまう。

　本当は父に連絡先を教えたくなかった。でも空港内で声をかけられたら困る。仕方がなかった。

【今月はもう無理だよ。お金がない】と返信し、スマホをバッグにしまった。

　一度渡してしまえば、こうなることはわかっていた。だけどあそこで渡さなかったら、会社の人たちに父のことがバレてしまうし、可能性は低いけれど、どうにかして母の居所を探し、母にお金を催促するかもしれない。

　その不安が拭えず、ズルズルとお金を渡し続けてしまっている。

　でもそれも終わりにするべきだ。さっきのメッセ―ジを見て、娘にお金を要求していたことを悔やみ、反省してくれるといいんだけれど……。