契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
それから数日経ったが、父からの返信はなかった。私からはもうお金を取ることができないと諦めたのかもしれない。

　とはいえ、まだこっちにいるはずだし、ぬか喜びはするわけにはいかないよね。ちゃんと諦めて地方に戻ったことを確認しなくては。

　何通か父にメッセージを送ったけど、既読が付くだけで一向に返信がなかった。

　もしかしたら誰かに言われて反省したり、自分の行いを後悔したりしているのかも。そんな淡い期待に胸が膨らんだ。

「お疲れ、凪咲」

「お疲れ様」

　社員食堂で持参したお弁当を食べていると、そばが載ったトレーを手に真琴がやってきて隣の席に腰掛けた。

「あれ？　凪咲がお弁当って珍しいね」

「うん、ちょっと節約しようかなって思って」

　父にお金を渡したせいで生活費がカスカス。とてもじゃないが、食費にお金を費やすことができない。

「偉いね、凪咲は。私なんて家に帰ったら疲れちゃって自炊もできていないよ。少しは見習わないといけないね」

　そう言いながら真琴はばを啜り始めた。隣から美味しそうな匂いがして食べたくなってしまう。

　だけど必死に我慢だと自分に言い聞かせてお弁当を食べ進めていく。
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