契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「凪咲は料理が得意で羨ましいな。……真田さんも幸せ者だね、凪咲と再婚したら毎日手料理が食べられるんだから。早く真田さんと予定があって、凪咲の気持ちを伝えられるといいね」

「う、んそうだね」

 小声で言われた言葉に曖昧に答えた。

 真琴には自分の気持ちに気づいたことを伝えた。だけど、どうしても父については打ち明けられなくて、お互いの予定が合わずに気持ちを伝えられずにいると言ってある。

 真琴だって国際線乗務に向けて、今が一番の正念場。そんな時に心配かけたくないし、誠吾さんのことでずっと相談に乗り、応援してくれていた彼女には早く自分の気持ちを伝えたかった。

 でも嘘をついている現状に、多少の罪悪感が募る。

「午後はどこ便?」

「あ、今日は私スタンバイなんだ」

「そうだったんだ。私はこれから福岡だよ。できれば散策したいところだけど、三十分後にはトンボ帰りで博多グルメにはありつけなくで残念」

「博多は美味しいものが多いもんね」
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