契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 地方の空港に行くたびに、次の便まで時間が空くと先輩たちがオススメの店を教えてくれる。それは代々引き継がれているみたいで、私たちも後輩ができたら教えてあげてと言われていた。
 
受け継がれてきた情報だけあって、どこに行ってもハズレがない。一泊となれば何軒かはしごするから、体重計に乗るのが怖い時期もあった。

 今は金銭的に食べ歩きする余裕がないから無理だけど、また貯蓄できたら先輩たちから色々なお店を聞いて食べて回りたいな。

「午後はなにする予定なの?」

「うーん、やっぱり勉強かな」

「そうなるよね。私もスタンバイの日はもっぱら勉強だもん」

 英語以外は苦手という真琴は、毎日が寝不足だと言うほど私よりも多くの時間勉強している。

 努力する姿を誰よりも知っているからこそ、父のことなど相談できない。

「無理しないようにね。身体を壊したら元も子もないよ」

「わかってるよ。凪咲もほどほどにしなよ」

 そんな話をしながらお互い完食し、真琴は戻っていった。私も真琴が行ってから少しして自習室に戻り、勉強を再会する。
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