契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

　いったいいくら私から奪えば気が済むのだろうか。……ううん、きっと気が済むことなんてないのかもしれない。

　父はお金があればあるだけ使ってしまう。だからどんなに母が働いてもお金は貯まらなかった。そして毎日朝から夜遅くまで働く母に感謝することもなくなっていったんだ。

「貸す余裕なんてないよ。私だって食費を切り詰めてギリギリの生活をしているの。それなのにお父さんはギャンブルやお酒にお金を使うの？」

「それはっ……」

　言葉を詰まらせた父に畳みかけていく。

「お金を稼ぐ苦労をお父さんだって知っているでしょ？　それなら私がどんな思いでお父さんにこれまでお金を貸してきたかも理解してほしい」

　父はなにも言わず、俯いてしまった。

　少しは私の気持ちが伝わった？　だったらもっとわかってほしい。

「離婚して離れて暮らしていたって、私にとってはたったひとりのお父さんなの。きっと新しい環境で一からやり直してくれていると思っていた。……正直、お母さんにして来たことを許せる日はこないと思う。それでも昔のような優しくて真面目なお父さんに戻って、幸せに生きていてほしかった」