契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「館野キャプテンから凪咲が知らない男と揉めているって連絡をもらったんだ。それと警備にも連絡をしてくれたからもう大丈夫だ」

 彼のその言葉通り、父は「離せ! なにをする」と騒いでいた。

「いや、大丈夫じゃなかったな」

 そう言うと誠吾さんはゆっくりと私の身体を離し、さっきまで父に掴まれていた手首を見つめ苦しそうに顔を歪める。

「血が出てる。……遅くなって本当に悪かった」

「そんなっ! 誠吾さんはなにも悪くありません」

 こうして助けにきてくれたじゃない。それだけで十分だよ。

 その思いで言うと、誠吾さんは目を細めた。

「凪咲、俺の後ろから出るなよ」

「えっ? あっ」

 誠吾さんは私の前に立つと、取り押さえる警備員に抵抗する父と対峙した。

「お久しぶりです、お義父さん」

「お前はっ……!」

 誠吾さんを見て父も思い出したのか、言葉を詰まらせた。
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