契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 荷物を下ろすのを手伝ったり、歩行に困難があるお客様をご案内したりと最後まで気を抜けない。

 機内清掃とオフィスに戻ってからの雑務を終え、勤務時間が終わるとすぐにスマホを手に取った。

 たしか今日は誠吾さん、お休みだったはず。少しの時間でもいいから会いたい。

 ダイレクトに【会いたいです】と送り、スーツケースを引きながら廊下を突き進む。すると電話が鳴った。

 一度足を止めて電話の相手を確認すると誠吾さんからだった。高鳴る胸の鼓動を押さえ、通話ボタンを押す。

「もしもし」

『お疲れさま。仕事終わった?』

 数日ぶりに聞く誠吾さんに声に思わず泣きそうになりながら「はい、今終わりました」と答える。

『じゃあ駐車場で待っているから早く来い』

「えっ?」

 嘘、誠吾さん今日休みだよね? それなのに駐車場にいるってことは私と同じ気持ちだった? だから迎えに来てくれたの?
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