契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「……咲。凪咲、起きなさい」
懐かしい声が聞こえてきて瞼を開けた瞬間、目を疑う。
「ふふ、びっくりした?」
私の驚く顔を見て満足げに笑っているのは、久しぶりに会う母だった。
「え? どうしてお母さんがここに? これって夢?」
混乱する私を見て母は「夢じゃないから」と言う。
「今日はね、真田さんにご招待いただいたのよ。わざわざ空港まで迎えに来てくれたんだから。凪咲がぐっすり眠ってくれていたおかげで、真田さんとドライブできて幸せだったわ」
夢見心地に話す母のうしろで、誠吾さんは口を押さえて必死に笑いをこらえていた。
「ほら、もう十七時よ? 早く着替えていきましょう」
「行くってどこに?」
ベッドから降りた私に誠吾さんが説明してくれた。
「前に約束しただろ? 今度、お義母さんも連れてまた三人で来ようって」
そこは以前、ふたりで訪れた日本料亭だった。