契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 甘い声で手招きする彼に引き寄せられ、誠吾さんの胸に飛び込んだ。すると彼はギューッと私を抱きしめる。

「おはよう」

「おはようございます」

 挨拶を交わしただけなのに、幸せな気持ちでいっぱいになるから不思議だ。

「身体は大丈夫か?」

「ちょっと痛みますけど、大丈夫です」

 それにこの痛みは誠吾さんと結ばれた幸せの証でもあるから。

「そっか、じゃあ沸かしておいたから風呂に入ってくるといい。……つらいようだったら一緒に入って身体、洗ってやろうか?」

 意地悪な声で言う彼に対し、ムキになって「ひとりで入れます」と言い返せば、誠吾さんは笑う。

「そっか、残念。でもいつか絶対ふたりで入ろうな」

 そう言って触れるだけのキスを落とされ、誠吾さんに振り回されている感が否めない。

 だけど、子供のように無邪気に笑う彼もカッコいいと思う私もどうかと思う。

 ただ身体を重ねただけなのに、すごく誠吾さんのことを好きになっている。

「え? 嘘、ここにも?」

 浴槽に浸かりながら身体を見たら、至るところにキスマークが付けられていた。どこも服で隠れる場所だけど、すごい数だ。

 でもすべてが彼のものだっていう証のようで嬉しい。

 誠吾さんのことを考えていたら逆上せそうになり、慌てて湯船から出る。

 着替えを済ませ、リビングに向かうと誠吾さんは真剣にパソコンを操作していた。

「誠吾さん、出ました」

 声をかけてやっと私がリビングに入ってきたことに気づいたのか、誠吾さんはパソコンを閉じた。
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