契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「だけどお母さんはすごく嬉しいわ。一度は離れても再び出会い、そして今度こそ心から愛することができたなんて、運命以外のなにものでもないもの。それに真田さんなら、凪咲のことを幸せにしてくれる」

「……うん」

 母は私と向き合い、両手を握った。

「これまで凪咲にはたくさん苦労をかけてしまったわね。その分、真田さんと幸せになるのよ」

「お母さん……」

 改めて言われるとせっかく綺麗にしてもらったのに、涙でメイクが崩れそうになる。必死に涙を堪えながら、私も母に感謝の思いをぶつけた。

「私のほうこそ今日まで育ててくれてありがとう。お母さんがいたから今の私がいるの。だからお母さんも私と同じくらい幸せになって」

「凪咲……」

 好きな仕事をして旅行して、友達と楽しく過ごすのもいい。愛する人と出会えたら再婚したっていい。どこにいってもいいから、笑って幸せに暮らしてほしいよ。

「ありがとう。じゃあお互い幸せになりましょう」

「うん、そうだね」

 零れた涙を拭い、笑顔で母と笑い合った。
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