契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 私だとはいっさい気づかずに、初めてのフライトを終えた私を終始気遣っていた。

 彼に対しての恋愛感情はなかった。ただ、感謝の思いが強いからこんなにも覚えてくれていないことや、再婚していたことにモヤモヤしているのだろうか。

「ねぇ、凪咲。初フライトのお祝いにおいしいものを食べにいかない?」

「いいね、食べに行こうか」

「そうこなくっちゃ」

 私の返事を聞き、真琴は急いで身支度を整える。

 そうだよ、今日は長年の夢が叶った記念すべき日なんだ。緊張しながらも楽しんでCAとして搭乗した体験を真琴と分かち合いたい。

 彼女とアパート近くにあるカフェに寄り、おいしいご飯を食べながらどんなお客様や先輩がいたか、困ったことはなかったかなど様々な話で盛り上がった。
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