契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
緊急接触
 八時二十五分発、那覇行き。今日、私が最初に搭乗する便だ。先輩たちとともに機内確認を念入りにしていく。

 CAの主な仕事はふたつ。機内サービス業務と保安業務だ。機内サービスは具体的に飲み物などの提供、機内販売、機内アナウンスに対し、保安業務は保安要員としてお客様の安全を守ること。

 そのためにお客様の搭乗前にクルー全員で不審物がないか見て回り、すべてのドアの開閉操作の確認もする。

 お客様が搭乗した後は、非常用設備の案内をして離着陸前の安全確認もしなくてはいけない。
 それらがすべて終わると、ブリーフィングとなる。

 ひとつひとつの客席を確認していると、「凪咲ちゃん」と声をかけられた。

「おはよう。朝から凪咲ちゃんと同じ便で嬉しいよ」

 そう言って嬉しそうに手をひらひらさせて近づいてきたのは、館野キャプテンだ。

「おはようございます。こちらこそご一緒できて光栄です。……ですが館野キャプテン、あのですね、その名前呼びはちょっと控えていただいてもよろしいでしょうか?」

「え? なんで?」

 キョトンとする館野キャプテンに深いため息を漏らしそうになる。
< 30 / 236 >

この作品をシェア

pagetop