契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 初フライトでお世話になってからというもの、どうやら館野キャプテンの姪っ子さんが私と同じ〝凪咲〟というようで、変な親近感を抱かれ、顔を合わせるたびに「凪咲ちゃん」と言って気軽に話しかけてもらっている。

 最初は単純に嬉しかったけど、働き始めてそろそろ一ヶ月。社内のことに関してわかってきたこともある。

 館野キャプテンは四十歳とは思えないほど若々しくて、誠吾さんに次ぐイケメンパイロットだ。館野派と真田派に別れるほど人気がある。

 機長であり、社交的で誰に対しても分け隔てなく接してくれて独身とくれば、先輩たちの中では誠吾さんより館野キャプテンのほうが人気があると真琴が言っていた。

 そんな彼に「凪咲ちゃん」と呼ばれた私はなにかと注目を集めてしまい、一部の館野キャプテン狙いの先輩からは敵対視され始めている。

 だからこうして声をかけてくれるのは嬉しいのですが、その〝凪咲ちゃん〟呼びだけは止めていただけませんか? 私、このままじゃ先輩たちに目をつけられてしまいそうなんです!
 と、正直に言えたらどんなにいいか。

「凪咲ちゃん?」

 思い悩む私を心配そうに見る館野キャプテン。
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