契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「よろしくね、鮎川さん。しっかり確認して今日は私たちの足を引っ張らないことを祈ってるわ」

「……はい、気をつけます」

　笑顔で言われた嫌味に、どうにか笑顔で返す。

　金城さんは一言で言うと美人。ちょっぴりきつい印象を持つけれど、CAとしての彼女はお客様への対応は完璧で誰もが一目置いている。

　その反面、後輩に対してのあたりがきつく、真琴が初フライトの日に言っていた怖い先輩というのが金城さんだったようだ。

　かくいう私も何度か一緒にフライトしたことがあるけど、回を重ねるごとに敵対視されている気がする。

　初めて金城さんと仕事をした時、初めてビジネスクラスのサービス業務を担当し、緊張してドリンクサービスでオレンジジュースの補充をするのを忘れてしまったことがあった。
　さっき言われたのはその時のことだと思う。

　でもミスした私が悪いし、これからは気をつければいい。そうすれば金城さんとも少しは打ち解けられるよね？　これからも敵対視され続けたら仕事がやりづらいもの。
　そのためにも今日は絶対にミスしないようにしないと。

　いつもよりも気合いを入れて準備を進めた。
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