契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「今のところはまだだけど、大きく進展させる作戦があるの。既婚していようが関係ないわ。絶対に奥さんから真田さんを奪ってみせるから」

　ちょ、ちょっと待って。まさか金城さんって真田さんのことが好きなの？　しかも奥さんがいるのに奪うつもりって……。

　もちろん好きな気持ちを否定することなど、誰にもできない。だけど誰かの幸せを奪ってまで幸せになることに意味はあるのだろうか。

　真田さんには愛する奥さんがいる。それに彼は愛妻家のようだし、奥さんだって幸せに決まってる。

　そんなふたりの幸せな日々を奪いたいと思うほど、金城さんは真田さんのことが好きってこと？

　ぐるぐると考え込んでいると、先輩たちは急にそわそわし出した。

「嘘、ちょっとこっち来るよ」

「えぇー、なんでなんで？」

「私のメイク、崩れてない？」

　こそこそと話をする先輩たちを横目に彼らのほうに目を向ければ、館野キャプテンと目が合った。

「鮎川ちゃん、お疲れ」

　館野キャプテンが爽やかに手を振って私の名前を呼んだ瞬間、先輩たちはいっせいに私を見た。それもすごい剣幕で。
　たじろぐ私に気づくことなく、館野キャプテンはどんどん近づいてくる。