契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
　声をかけられて一緒に食事をした日を境に、私と誠吾さんの関係は一変した。

　帰りに連絡先を交換し、毎日のように他愛無いやり取りをしているし、誠吾さんは職場で頻繁に声をかけてくるようになった。

　それはあいさつ程度のものだけど、誠吾さんが自分から何度も声をかけるCAなんて今までいなかったようで、だから余計に私は注目を集めてしまっている。

　だけど誠吾さんに悪気はないわけだし、言葉通りなにかと私を気にかけてくれていた。あれから二回食事に行き、そこでは私のどんな話も聞いてくれて、彼のことも話してくれた。

　二時間はあっという間に過ぎてしまい、もっと話していたいと思うほど楽しかった。

　誠吾さんとはこれからもずっと今の関係を続けていきたい。だったら周りの目など気にせずに堂々としていればいいだけと自分に言い聞かせてはいるけれど、やっぱり注目を集めることには慣れそうにない。

　早く食べて人の少ないところに行こう。

　再び箸を持つ手を進めてご飯を口に運んでいると、隣の席の椅子を引く音がした。

「お疲れ、凪咲」

　そう言って隣に座ったのは真琴だった。
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