契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

　そう、だよね。これが逆の立場だったら私は今、すごくもどかしくて悲しい気持ちでいっぱいのはず。真琴の噂を聞くのも頼ってもらえないのも嫌だ。

「ごめん、真琴。……今度、相談したいから時間を作ってもらえる？」

　真琴は誰かに言いふらしたり、話を聞いて態度を変えたりする子ではないことを私が一番知っているじゃない。
　その思いで言うと、真琴は目を輝かせた。

「もちろん！　じゃあ今夜どう？」

「今夜？」

「うん、善は急げって言うじゃない。そうだ、久しぶりに凪咲の家に泊まってもいい？　一度家に戻って着替えとか準備してから行くね。じゃあ福岡便、行ってきます」

「え？　あ、ちょっと真琴？」

　一方的に言って真琴は行ってしまった。

　こっちの予定も聞かずに勝手に決めて……。とくに用事はないし私も早く真琴に話したいからいいけど。

　嵐のように去っていった真琴を思い出しては笑みが零れる。

「おいしいご飯でも用意してあげようかな」

　真琴がうちに泊まりに来るのは今回で三回目。二回とも手料理を振る舞ったらすごく喜んでくれたんだよね。

　今晩はなにを作ろうか考えながら残りのご飯を食べ終え、私も食堂を後にした。