契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 誠吾さんに感謝しているし、再婚していたって知った時はショックも受けた。でもそれ以上の感情なんてない。

「本当に凪咲が真田さんのことを好きじゃなくて感謝しているだけだったら、再婚して幸せになってくれていて嬉しいって思うものじゃないの?」

「それはっ……!」

 そう、かもしれない。恩人が愛妻家と呼ばれるほど奥さんのことを愛していたなら、嬉しいと思うもの。それなのに、どうして私は寂しいとか悲しいって気持ちが優先したのだろう。

 自分の気持ちがわからなくなる中、真琴は私の気持ちを揺さぶる。

「離婚してもう五年経つのにその間、凪咲は誰にも恋をしなかったのがなによりの証拠じゃない?」

「大学生の時はいろいろな資格を取るのに忙しかったから……」

「忙しくても、誰かを好きになることはできるはずだよ。それなのに恋しなかったのは、凪咲の中で真田さんの存在が大きかったからじゃないの?」

 違う、そうじゃないと言い返したいのに言葉として出てこない。誠吾さんのことを忘れた日などないけど、それは本当に心から感謝をしているからだと思っていた。

 でも違った? 私ってずっと誠吾さんのことを好きだったの?
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