契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 考え込んでいると、真琴はクスリと笑った。

「これを機に自分の気持ちと向き合って。真田さんは結婚していないみたいだし、再婚してもいいんじゃない?」

 真琴ってば簡単に言ってくれる。

「再婚なんてするわけないじゃない」

「どうして? 私から見て凪咲は真田さんにことを好きだと思うけど?」

「たとえそうだとしてもだよ? 私はもう愛のない結婚はしたくないの。……心から愛する人と結婚して幸せになりたいし、同じくらい私のことを想ってくれる人がいい」

 それが母の願いでもあるから。幸せになって母を安心させてあげたい。

「じゃあ真田さんにも凪咲のことを好きになってもらおう」

 またいとも簡単そうに言う真琴に苦笑いしてしまう。

「無理だよ。誠吾さんが私を助けてくれたのは、自分と同じ夢を持っていたからだって言っていたし、それ以上の感情なんてないと思う。初めて食事をした時も、これからは同僚としてよろしくって言われたし」

 力になると言ってくれたのも同僚としてだ。むしろ元夫婦だけど、あくまで契約上の関係だっただけで、恋愛感情などいっさいなかった。それはこれからも変わらないという牽制だったのかもしれない。

 考えれば考えるほどそんな気がしてきた。
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