契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「ちょっと、なにひとりで落ち込んでいるのよ」

「別に落ち込んでいるわけでは……」

「がっつり落ち込んでいたけど？」

　言葉を被せて言われ、なにも言い返せなくなる。そんな私を見てなぜか真琴は嬉しそうにしていた。

「私が困っている姿がそんなにおもしろい？」

　思わずムッとなって棘のある声で言えば、真琴は声を上げて笑った。

「アハハッ！　今度は怒った！　いいね、恋に悩んで私に当たる凪咲も」

「もう、からかわないでよ」

　これは本当におもしろがっているようだ。

　少し冷めてしまったおかずをパクパクと口に運んでいる間も、真琴は私を見つめて目を細めた。

「だってさ、凪咲ってばこれまで一度も恋愛したことがないって言っていたじゃない？　だから恋バナはできないと思っていたけど、これからはできるってことでしょ？　私も少し仕事に慣れてきたし、これからは素敵な恋をしたいと思っているから凪咲と恋バナできると思うと嬉しくて」

「真琴……」

　あまりに真琴が嬉しそうに言うものだから、食べていたものが喉に詰まりそうになる。
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