契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「状況を理解し、自分が動くべきだと思えば動けばいい。もちろん周りに頼ったり相談したりすることも大切だぞ? 空の上ではクルーは全員仲間だ。なにかあれば協力して解決すればいい」

 すごいな、誠吾さんは。彼と話していると自然と視野が広がっていくようだ。

「まぁ、これはすべて館野キャプテンに教わったことなんだけどさ」

「館野キャプテンが言っていたんですか?」

 聞き返してしまうと、誠吾さんは人差し指で頬を掻いた。

「あぁ。俺も新人時代、凪咲のように暴走したことがあったんだ。当時の俺は間違っていない、常に正しい選択をしていると信じて疑わないとんだ新人パイロットだった」

 苦笑いしながら言う誠吾さんからは、まったく想像がつかない。私の知っている彼は今も昔も大人で完璧な人だったから。

「きっと誰もがどんな職種に就いたとしても、必ず失敗をするだろう。そんな時に正しい道へ導いてくれる上司がいるかいないかで、大きく変わってくると思う。俺には館野キャプテンがいたように、凪咲にもチーフパーサーがいるから大丈夫だろ。信頼できるだろ? 彼女は」

「……はい」

 まだ数ヶ月しか一緒に仕事をしていないけれど、尊敬できる人だ。
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