契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない

「これからも多くのことが学べるな。俺もまだまだ館野キャプテンから学ぶつもりだ。失敗を繰り返して人は成長していくんだ、だからそんなに気に病まずに凪咲らしく頑張ればいい」

　ふわりと笑って言われた一言が、胸の奥深くに突き刺さる。〝私は私らしく〟そうだよね、今日、あのお客様の笑顔を見て後悔はないって思ったんだ。

　咄嗟の行動のすべてが悪かったわけではない。そう考えれば、不思議と前向きな気持ちになれる。

「ありがとうございます、誠吾さん」

　素直な思いを口にすると、彼は照れくさそうにそっぽを向いた。

「こういうの、あまり慣れていないからやめてくれって言ったのを忘れたのか？」

「思ったことを言っただけですよ？」

「心の中で思ってくれていればいい」

「それでは誠吾さんに伝わりません」

　折れずに言い返したら、誠吾さんは小さなため息を漏らした。そして恨めしそうに私を見る。