契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「凪咲ってさ、時々びっくりすることを急に言うよな」
「え? どういうことですか?」
すると誠吾さんは真っ直ぐに私を見つめた。
「じいさんが亡くなった時、いきなり俺を抱きしめて『契約上の関係ですが、私は正真正銘誠吾さんの妻です。家族の前でくらい、強がらないでください。泣いてください』って言ってくれただろ?」
「よく覚えていますね」
「当然。一生忘れないよ」
私だって一生忘れられない。あんなにも胸を締めつけられたのは初めてだったから。それにすべて本心だった。ただの契約結婚だったけれど、あの時ばかりは彼の本物の家族として慰めてあげたいと思った。
「あの時、思いっきり泣いたおかげで俺は前に進むことができた。凪咲にはすごく感謝しているよ」
「誠吾さん……」
それは私のほうだ。誠吾さんには感謝しても足りないほどの恩義がある。どうすれば彼に返すことができるのだろう。
真っ直ぐに見つめられる中考え込んでいると、彼のスマホが鳴った。
「悪い、ちょっと出てくる」
「はい」
電話の相手を確認すると、彼は部屋から出ていった。そして入れ替わりに女将がデザートの甘味を運んできてくれた。
「え? どういうことですか?」
すると誠吾さんは真っ直ぐに私を見つめた。
「じいさんが亡くなった時、いきなり俺を抱きしめて『契約上の関係ですが、私は正真正銘誠吾さんの妻です。家族の前でくらい、強がらないでください。泣いてください』って言ってくれただろ?」
「よく覚えていますね」
「当然。一生忘れないよ」
私だって一生忘れられない。あんなにも胸を締めつけられたのは初めてだったから。それにすべて本心だった。ただの契約結婚だったけれど、あの時ばかりは彼の本物の家族として慰めてあげたいと思った。
「あの時、思いっきり泣いたおかげで俺は前に進むことができた。凪咲にはすごく感謝しているよ」
「誠吾さん……」
それは私のほうだ。誠吾さんには感謝しても足りないほどの恩義がある。どうすれば彼に返すことができるのだろう。
真っ直ぐに見つめられる中考え込んでいると、彼のスマホが鳴った。
「悪い、ちょっと出てくる」
「はい」
電話の相手を確認すると、彼は部屋から出ていった。そして入れ替わりに女将がデザートの甘味を運んできてくれた。