契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「凪咲は俺が食事に誘ったりこまめに連絡したりしていたのは、契約結婚の対価だと思っていたのか?」

 彼はそっと私の手を握った。その瞳はどこか怒りが含まれていて戸惑いを隠せなくなる。

「そう、じゃないんですか?」

 そもそもそれ以外の理由がある? 離婚後も母と連絡を取り合っていたのも、こうして私を気にかけてくれているのも、それが理由じゃないの?

 すると誠吾さんは深いため息を漏らした。

「驚いた。まさか俺の気持ちがこれっぽっちも凪咲に伝わっていないとは……」

 呆れたように言う彼にますます困惑してしまう。

「凪咲のことをわかっているようでわかっていなかった俺も悪いか。じゃあ単刀直入に言う。凪咲、俺と再婚しよう」

 真剣な瞳を向けられて身構える私に、誠吾さんは耳を疑うことを言った。

冗談だよね? 再婚だなんて。もしかしてまた誰かに結婚することを強要されているの? そうでなければあり得ない。なにより私はもう愛のない結婚はしたくない。
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