契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「再婚なんてしません」

 その思いで言うと、誠吾さんは眉根を寄せた。

「なぜ?」

「なぜって……」

 愛のない結婚はしたくないと言ったら、私が誠吾さんに少なからず誠吾さんに好意を抱いていることがバレてしまう。

 そうなったら、ただの同僚にさえなれなくなるかもしれないと思うと言葉が続かない。

「今度は契約ナシの結婚をしたい。凪咲と家族になりたいんだ」

「え?」

 次の瞬間、握っていた手を引かれ強く抱きしめられた。身体中で彼のぬくもりを感じ、胸が熱くなる。

「せ、誠吾さん?」

 ドキドキしているの、絶対に伝わっているよね? どうしよう、恥ずかしくて死にそう。

 離れようと抵抗してみたものの、さらに彼は強い力で私を抱きしめる。

「俺もこれからは凪咲のように、素直な思いを伝えることにするよ。……凪咲のことが好きだからもう一度家族になりたい。だから凪咲にも早く俺を好きになってもらう。これから覚悟しろよ」

 好き? 誠吾さんが私を? 信じられない、だってそんな素振りまったくなかったよね?

 だけど愛しそうに私の背中や髪を撫でる誠吾さんの手があまりに優しくて、私はなにも言い返すことができなかった。
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