契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 言葉を交わしても挨拶程度。おかげで噂はすっかりと消え、コソコソと話されることは少なくなった。

 その代わり彼は、以前にも増してこまめに連絡をくれるようになった。時間が合えば電話で話すことも多い。

 言葉の端々から誠吾さんが私を知ろうとしていたり、私に対する想いをナチュラルに伝えたりしてきて、少しずつ彼の気持ちを信じ始めている自分がいた。

 こうして彼からのメッセージひとつでドキッとしてしまうほど、以前よりも彼に対する気持ちが大きくなっていると思う。

 メッセージをタップして、送られてきた文面に目を通す。

【おはよう。今日は国際線乗務でニューヨークへ行ってくる。四日後には戻るから】

「ニューヨーク……」

 国際線乗務となると場所にもよるけど、渡航先で一日~二日滞在するのが基本だ。誠吾さんと再会してから一度も休みが被っていないほどパイロットは忙しい。

 私も今は国内線のみの乗務だけど、近いうちに国際線にも乗務することになる。これまでは何度か食事に行く機会があったけど、難しくなるかもしれない。

 そう思うと寂しさを感じる自分は、相当誠吾さんに惹かれていると実感する。

 誠吾さんのことを考えると、頬が熱くなって熱を冷ますように手で仰いだ。
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