君との恋の物語-mutual dependence-
卒業
4年生になってすぐの、5月のこと。

私は、一企業の面接を受けた。

その企業は、今や栃木県を中心に事業を展開する学習塾。

立地はあえて住宅街を選んでいるようで、それもなるべくビルの一室とかではなく、建物ごと所有していることが多い。

これは、その学習塾が勉強だけでなく、講師、生徒間や生徒同士の交流に力を入れているからだ。

基本的に営業時間内であれば自由に使える交流広場を持っている。

しかも、自習室は別に!

私は、その点がすごく気に入ったので、すぐに面接にエントリーした。

それから、この企業の歴史や方針を徹底的に調べた。それはもう、答えられないことは全くないくらいに。

志望動機についても、しっかり考えていった。と言っても、志望する理由はカッコつけたところで変わらないので、如何にわかりやすく、他の学生よりもここに入りたいとアピールできるかをよくよく考えた。

それはそうだよね。簡単に思いつくことは、誰だって思いつくから。

とにかく練って練って。練る。

うわさによると、「学生時代の成果物」を用意しておくといいみたい。

物はなんでもいいみたいで、1番代表的なのは「授業で取っていたノート」、かな?

面接のために綺麗に書いたノートを用意する人もいるみたいだけど、それでは意味がないので、私はサークルで作った歴史書の、私がメインで担当したページを数ページ持っていくことにした。

更に、サークルを作るきっかけになった資料も。そう、授業の後に高畑先生に持っていったあの資料だ。

あの資料がサークル活動を経てどうなったのかを話してみる。

面接でどこまで話せるかはわからないけど、用意は絶対に必要だ。

決まったら2種類の資料を元にどうやって話していくのかを考える。

順序や、どこがどのように改良されたか、そのアイディアは誰が出したのかなどなど。

うんうん。考え始めたら楽しくなってきた。

よし、持ってるアイディアを全部書き出して、それから組み立てていこう!

こうして、私は面接の準備を進めていった。

もしかしたら、受験勉強より必死だったかも。

いつでも面接のことばかり考えていたし、成果物については夜中までまとめたり、想定できる質問と答えを全部書き出して、円滑に答えられるように何度も練習した。

それはもう、目の下に隈作って、夜食食べるからちょっと太って…。

それでも、絶対に失敗したくないので頑張った。


そうして迎えた入社面接当日。

結論から言うと、成果は出しきれたと思う。

ちゃんと資料も見てもらえたし、私たちが何を伝えたくてどういう工夫をしたかも聞いてもらえたし、質問には全部しっかりと答えられた。

受験の時もそうだったけど、これで落ちるなら、もうどうしようもなかったんだと諦めがつく。

大袈裟じゃなく、4年間の全てを出しきれたから。

とりあえず、今日は帰ってゆーっくり寝よう。



1週間後。

結果はメールで通知される。

今回通ったら、次は最終面接だ。

何故か私はそこまで緊張してなくて、割と落ち着いてメールを待っていた。

その日は授業も午後からだったので、ゆっくり起きて準備して…。

メールは、学校に向かう途中できた。

結果は…
























合格。だった。

じわーっと、体が暖まるように嬉しさが込み上げてくる。

視界が少しだけぼやけて、叫び出したくなるような喜びが全身を駆け巡り始めた!

やった!やったんだ!合格した!!

ちゃんと自分の力で!!!!


電車を降りてすぐに、詩乃に電話した。

『そうか!!やったな!!お祝いしよう!』

まだ就職が決まってない子も沢山いるので、友達には学校で直接会った子と、夏織にはメールで知らせた。

夏織からの返信は至ってシンプルだった。

【おめでとう。でも、気を抜かないでね。】

文面だけだとちょっと冷たいけど、夏織とはこれでちゃんと通じ合えてるからいいの。

いつもありがとね。

研究室の教授にも、報告して、授業に出たら、あっという間に夕方だった。

今日はまっすぐ帰ることにしていたので、電車に揺られて、一人で帰った。

よかった。合格できて。

でも、飽くまでも通ったのは1次。最終面接がまだ残ってるし、そんなに日があるわけでもないので、帰ったら早々に対策し始めよう。

でも、最難関と言われた1次を通過できたんだから、きっと大丈夫。

今までやってきたことと、これから何をやりたいかを、伝えるだけ。

頑張ろう。

うまくいくことを信じて。ひたすら努力しよう。


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