ゆっくり、話そうか。
脚長いし、おっきいし。

ボサボサ髪のままで起き上がっていたことを思い出し、とりあえず邪魔にならない横結びで軽くまとめた。
まとまりきらなかった後れ毛が、風を含んで自由に動く。

穏やかで気持ちよかった。

「園村さん、さっきから見えてる」

「あっ!ごめんっ」

がに股になっていた自覚はなく、スカートがめくれている感じもしなかったため気を抜いていた。
伸ばした脚を畳み、スカートの裾を引っ張った。

「違う、こっち」

自分の胸元を指し示した日下部の仕草で、自分が第2ボタンまで開けていたことを思い出した。
恥ずかしさの極みだ。

「あははは、重ね重ね、ごめん」

どこまで恥が放出されるのか。
自分のだらしなさに飽き飽きしながら、上までぴっちりボタンを止めた。
ネクタイがゆるゆるなままなのは、ご愛敬。

「無防備。誰かに襲われたらどうすんの?」

「無いわ」

「へーぇ」

日下部のトーンが低い。

目のやり場に困るようなかっこ見せておいて?

はっきりないと断言したやよいに、イラッとする。
胸元が見えるか見えないか、試されているとしか思えない格好を間近でさらされていた日下部は、正直目のやり場に困っていた。
本当はネクタイも絞め直してやりたいところ。

「ちょっと肩貸して、眠い」

「えっ」

やよいの答えを待つより先に、日下部の頭が肩に寄りかかってきた。
ピシッと背筋が伸び、緊張で固まるやよい。

がちがち。

微動だにしないやよいが可笑しくて、どこまでこのがちがちモードが続くのか見てみたくなった日下部が、「おやすみ」と言って目を閉じた。

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