ゆっくり、話そうか。
正直、肉付きのいいとは言えないやよいの体は小骨が刺さって眠るどころではないし、あまり体重をかけられないからこの体勢のキープも辛い。
けれど少しいじめてやりたくなったのだ。

えっ、えっ、
おやすみっ！？

完全に体を預けられる形にたじたじのやよい。
首筋には触れそうで触れない日下部の髪が風になびいているし、なによりこの至近距離が心臓に悪い。
ゼロ距離とまではいかなくとも、ほとんどくっついた状態。
どういうつもりでこんなに近づく距離を許してくれるのか、そればかりが気になってしかたがなかった。
もしかして日下部も…。
などという期待はとっくの昔に捨てている。
キャンプであれだけ拒絶されたのだから、二度とそんな甘い考えは起こさない。
　
日下部とはなにも起こらない。

いくらあの夜キスされたとしても、期待をして崩れ落ちる経験などするくらいなら今のままの距離がずっと続く方がよかった。
日下部への気持ちが吹っ切れるまでは。

まぁ、そんなもん、この状態やったらずっと無理やろうけど…。

自嘲が漏れた。
それにしても、奥歯の奥が酸っぱくて痛い。
恋愛の独特なこの感覚は、先が見えていないときなら楽しめるが、決して交わらないと分かっていても捨てられないとなると痛みしか感じられない。

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