ゆっくり、話そうか。
しかしやよいとしても浴びせられた言葉にしっかり傷ついていた。
途中で下がるなど出きるわけもなく。

「そんな嫌がられてまで番号言いたないわ。どうせ私のスマホに自分の番号残んの嫌なんやろ?心配せんでもかけへんわ。おつかれ、ばいばい」

虫でも払うように、邪険にヒラヒラ手を振った後日下部に背を向け、その場にしゃがみこんだやよいがただ闇雲に邪魔な茂みを掻き分ける。

なんや思てんねん。
いつまでも好きな気持ちが継続する思てんのか。
早よ帰ってくれ、
これは、あかん。
もうそろそろ泣く。
フラれたときは泣きもしなかった。
言われた言葉の大きさは予想外だったが、結果は覚悟していた。

不意打ちは準備できないから不意打ちなのだ。

日下部にはやよいにここまで付き合う義理はない。
彼氏どころか友達ですらないのだから、見つかるまで探すなんてしなくても誰も責めはしない。
やよいを放って帰るのが妥当だし、実際そうする人が大半だろう。

日下部の言うように誰かから責められることなど無いだろう。
だから、感謝しなければならないのは分かっている。
分かっていてもあの溜め息、すごい乗り気しないの一言がやたらと響くのだ。

好きになったきっかけとはまるで、違っていて、まるで、やよいの空想の産物だったかのような。
だがちゃんと存在している。
空想なんかじゃない。
あの時、無性に心惹かれた彼の姿は確かにあった事だ。
日下部にしてみれば些細なことだったかもしれないが、目の当たりにしたやよいには衝撃的だった。
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