ゆっくり、話そうか。
「やだよ、めんどくさい」

「お前がモテるのマジわかんねぇ」

「え、でもそれいいじゃない!日下部くんに勉強のコツ教えてもらおうよっ、せっかく最近はつるむことも増えたんだしっ」

「えー…」

万智の誘いに、日下部があからさまも度を越した嫌な顔をする。
なんだか妙な方へ話が進んでいく流れ。
やよいの頭に一抹の不安が過った。

これ、私の頭の悪さ全部バレる展開になるんちゃう?
みんなで勉強したら私の学力の無さがさらされるんちゃう?
寺久保くんあんなひゃらっひゃらしてるけど、実はそんな頭悪くないかもしれへんし??

軽く尚太への酷いイメージはさておいて、一応は進学校としても知られるここに通っている自分が未だ信じられないやよいは、これくらいは当然と思われている学力レベルではないことを皆にはバレたくなくて、思わず「嫌です!」っ、と挙手してしまった。

はっきりとした拒否で静まり返り、三人がなんとも複雑な表情でやよいを凝視する。

「絶対やりたくありません!断固拒否です!日下部くんに教わってもし理解できやんかったら、人格ボロボロのずたずたにされそうやからやりません!園村欠席します!」

ハキハキ元気よく。
小学一年生よろしく、もしくはスポーツ大会の選手宣誓の如く勇ましく言いきった。

あ…、しまった、
これあかんやつちゃう?

いくらなんでもまずすぎる。
下手すれば喧嘩を売っているも同然の拒否の仕方だった。
この話がお流れになるよう仕向けたかっただけなのに、ただただアンチ日下部発言になってしまった。

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