ゆっくり、話そうか。
後頭部にバックパックが刺さる。
砂利を蹴る音、やよいの倒れる音が、辺りにか細く響いた。
後ろでは尚太と万智が何やらもめていて、さすがに日下部の耳にも届き、女子生徒を突き飛ばしてこちらを振り返る。
見開かれた日下部の瞳と、崩れるのを四つん這いになって支えていたやよいの目ががっちり絡む。

やばい、

これは、ヤバすぎる。
盗み見みたいなこんな、絶対嫌われた。
しかもなんか、邪魔した。

砂利が刺さった手のひらと脛が、痛みにどくどく脈を打つ。
それよりもっと、蒸発した頭が酸素と血液を求めてばくばくしていた。

完全にやよいをロックオンした日下部が一歩脚を踏み出し、こちらに向かってもう一歩砂利を蹴る。

「ごっ、ごめんなさい!」

日下部の反応が怖くて、何がなんだか分からない頭でまず最初に謝罪した。
それしかなかった。
プライベートに踏み込んだ自分が悪かった。
四つん這いのまま頭を下げて、そしてまた上げる。
しっかりと日下部を見て、申し訳ない気持ちだけでも伝えたくて。

「あのっ、すいませんっ、覗きましたっ、すみませんっ、ここで見てましたっ。あの、そっちの人も恥かかせてすいませんっ、もう帰りますんでっ、そのっ、どうぞっ、続けて、ください!」

うっそやん、続けてて何!?
なにオススメしてんのっ!?
余計なお世話ちゃう!?

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