ゆっくり、話そうか。
言い終えてまた、自分がとんでもないことを言ったことに気づく。
日下部的にも勧められてもお前何様?だろうし、自分にとっても言わずもがな、また傷付いてしまう。
言ってて情けなくなる。
一刻も早く逃げたいのに、それでも日下部が咎めるためであっても自分を見てくるなら、自分もまた自分のしたことから逃げずにいたいと思ってしまう。
日下部はただやよいを見つめていて、なにも言おうとはしない。
その瞳からは表情が読み取れない。
怒りなのか苛立ちか、その両方か。
なにも言わずにいられるより何か厳しい言葉でも浴びせられた方が、まだ気持ちが楽だったかもしれない。

完全に怒らせてしまったのだと感じ、地面を強く握りしめた。
砂利がさらに食い込む。

日下部の影に隠れている女子生徒の顔がよく見えない。
もしかしたら泣かせてしまったかもしれない。
あの時さっさと逃げてしまえばよかった。
激しい後悔が襲ってくる。

「違うのっ、ごめんね、二人ともっ!わざとじゃないのっ、ここ帰り道でっ、校門行く道だから通っただけで、覗き見するつもりはなかったの!たまたま見かけただけでっ、ほんとごめんっ!」

見かねた万智が駆け寄り、やよいを起こして貼り付いた砂利を払う。

「えー、でも謝る必要なくね?外なら人目につくのわかってんだから、見られたくないならそっちが気ぃつけろよ」

「尚ちゃんは黙ってて!」

空気を一切読まない尚太の文句を、万智が口を塞ぐ形で制した。

「とにかく、ほんとにごめんねっ」

そういうと、やよいを引っ張るようにして奥へ追いやっていく。
日下部とやよいの絡んだ視線が切れる。

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