ゆっくり、話そうか。
日下部を含めた関西弁への否定的な態度に、アンチ標準語になってしまいそうな気がした。
加えて、可愛らしさには似合わない五組の西井さんの不敵な笑み。
それはやよいだけでなく、万智にも不快を与えていた。

「じゃあちょっとこっちへ一緒に来てもらっていい?」

名前も知らない友達がやよいにだけついてこいと声をかける。
万智がやよいの腕を引いたのが振動で分かる。

おぉっ、
これがあの呼び出しか!

こんなときだと言うのに、自分にも呼び出しコールが来たことに若干の感動を覚えた。
出来たら、リンチかもしれない雰囲気をまとっていないものがよかったと思いつつ。
しかし、友達数人を引き連れた五組の西井さんにホイホイついていくわけにもいかない。
呼び出す場所にまだ数人いたらと考えると、とても頷ける気分にはなれなかった。

「行かんよ」

怖すぎて行けません。

「え…」

すっかり自分たちの後をついてくると思っていた五組の西井さんと友達は、既に進行方向を目的地に変えていて、やよいの返答につんのめってしまっていた。
はぁっ?と、当然の反応が全員から寄越される。

「用事あるんやったらここでお願いできる?わざわざ移動せんでもええやろ?」

これは、周りからはどう見えているのだろうか。
小さい声を心がけて、揉め事にはならないようにしたいとは思うけれど、向けられるトゲはかなり鋭い。
昨日の引っ掛かりが大きい分仕方がないとはいえ、これでは周りからは和気あいあいには見えない気もする。
これ以上はお互いよくないだろうと思うのだが…。

「なんの用か分かるよね?」

五組の西井さんサイドは引こうとしない。

< 139 / 210 >

この作品をシェア

pagetop