ゆっくり、話そうか。
「いや?分からん。予想はできるってだけで」

「じゃあ…」

「だからってわざわざ移動する理由にはならん」

何されるか分からん。

という本音は言えない。

「昨日私に恥かかせたくせに?その話をまたここでしろってこと?人前で?」

やはりそれしかないわけで。
しかしそれならそれで、やよいにもたった今言い分はできた。

「そっちも今関西弁バカにしたやん。私は恥はかいてないけど腹立った。平常心脅かしたって意味ではおあいこや」

これは許しがたい。
そちらにはそちらの言い分と正義があるのかもしれないが、それはやよいの側にだってそうだ。
話があるなら圧などかけず、ここで小声で済ませればいいのではないか…というのは、そんなに無理なことなのか。
なにか文句を言いたいにしても、これでは誰も特はしない。
それに、今だって着実に、五組の西井さんもその友達も自分の品格を下げている。
少なくとも、今日、たった今までその存在すら知らなかったやよいや万智との初対面は、全くよくないのは確かだ。
それに、彼女たちの声が少しばかり大きくなっているのも気にかかる。

「え、と、西井、さん?恥かきたないんやったら大所帯はやめた方がええよ。自爆するよ?いちいち場所かえやんでもここで普通に世間話してるの装う方がよっぽど自然に見える」

そこまで言いきったところで日下部がこっちを向いているのに気づいた。
やはり普段より声を控えていても、雰囲気はただならぬものが若干混ざっていたらしい。
五組の西井さんもその友達も、このままではさらに声が大ききなるだろう。
腹が立っているなら、それを抑える事にまで気は回らない事が多い。

あ、
あかんわ。

こちらを見ている日下部の表情は苛立ちを含んでいて、それは自分にか五組の西井さん宛てかは判断つかない。
日下部の事だから、俺の事なら俺に言えばいいでしょという類いだろう。

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