ゆっくり、話そうか。
守れなかった分、二人の距離は告白した相手フッた相手だけではないことを伝えたかった。
もっと近付いているのだと。
それくらいは、せめて、と。

「二度とせんといてて、言うたやん」

「うるさい」

何で君はこんなになっても、
こんな目に遭わされても、
こんなになっても俺の事…。
何で…?
応えてもいい、のだろうか。

やよいの想いが今も自分にあるなんてとんだ勘違いかもしれない。
でも、自分に向いていない確証が持てない。
やよいの行動、表情、全身からにじみ出る雰囲気はあきらかに想いを示している。
あのときからずっと。
やよいをちゃんと知ろうとしたあの日からずっと。
変わっていない。

「ありがとう」

好きになってくれてと、言いそうになった。
そんな気がしている…の域を越えていないのに、厚かましさにヘドが出る。
けれどやよいは気にもしていないようで、まだすっぽり腕の中に収まっていた。

「なんでありがとう?変やで?」

憎まれ口を叩いても、今のやよいにはありがとうでよかった。
ごめん、とか、大丈夫?とかならきっともっと落ち込んだはずだったから。
自分の何かに、日下部がありがとうしたかったのならそれでいい。

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