ゆっくり、話そうか。
「番号間違えたかも。鳴ってないよね?」

辺りを気にしながら声をかけてきた日下部に驚いた。
聞き取れたんか、早口。
邪険に振り払ったし、恥ずかしすぎてきつい態度を取ってしまったし、それだけではなくさっきもさっさと帰れみたいにしてしまったからさすがにこれ以上はないと思ったのに。
日下部は嫌々ながらも番号を入力し、やよいの携帯にかけてくれていた。

だからいちいちっ、好きになるようなことをっ!

諦めなければならない相手だというのに、瞬間瞬間で挫折させるようなことをする日下部が憎らしい。

「サイレントやから鳴らんで」

「はっ?なんで…っ」

うっかりスマホを落としそうになった。
淡々と、何事も川の流れのようにこなしていきそうな日下部からの驚きの反応。
ちょっと乱れた声がおかしい。

「学校持ってくのに音出したらあかんやん」

「じゃあ鳴ってても裏向きになってたら分かんないじゃん」

真面目かお前は。
授業中はマナーにするとかでいいだろ。

日下部の周りにはまずいないタイプ。
授業中もマナーにするかそのまま音ありというのが多く、また、授業中に音が鳴っても教師からそこまで強い指導も入らない。
なのに一応飾りで記載されてるマナーモードにの校則をしっかり守っている奴がいるとは、驚き以外の言葉が出てこない。

「うっすら光ってたら分かるよ。外暗いんやから。かけっぱにしといてもらっていい?」

「ったく…」

結局すぐに発見、という道筋は無いようだ。

< 15 / 210 >

この作品をシェア

pagetop