ゆっくり、話そうか。
解せない顔の担任の頭はいじめに直結されていたのだろう、本当に大丈夫なんだなと何回も念を押してきた。
もしかしたら尚太や万智から事情は聞いていたのかもしれない。
やたらとしつこく確認され、ちょっとげんなりした。
今回のことはサボりではなく体調不良で処理されることになったので、やよいとしても落ち着くところに落ち着いたといった感じだ。

万智も尚太もその話題に触れることはせず、いつも通りを徹してくれている。
もちろん日下部も。
尚太にいたってはまだおさまりどころが見つからないようで、もっと酷い目に遭わせてやればよかったと毒づくこともあるが、それ以外では話に上がらない。
あれだけ恥をかくことになったのだから、やよいとしては後味が悪いというかなんというか。
けれどそこまで自分に優しさを分けてもらえることは、ありがたいとしか言いようがない。

日下部にしても、まさか自分の荷物を持って来てくれていたとは思わず、何だかんだでまだお礼が言えていない。
今日どこかでタイミングをみてお礼を伝えたいとは思っている。
友達なのか何なのか、未だに関係は分からないが、フッた相手の荷物を触る行為自体日下部には縁がなさそうで、心中を推し量ればやよいでさえ唸ってしまう。

「うん、ちょっと早かったか」

待ち合わせ場所に到着したが、二人の姿はまだ無い。
夏の昼下り、道路の先にも散歩する人影はほとんど無く、ずっと前の方もモヤモヤした地面が見えるだけ。

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