ゆっくり、話そうか。
スマホをバックパックの上に置き、鳴らないスマホを探す。
不思議とうんざりした気持ちにはならなかった。
そうしてどれくらい黙々と探しただろうか、何度か電話をかけ直したり場所を変えたりあらゆる事をしたが見つからず、仕切り直してまた明日にと声をかけようとしたとき、

「あっ、あった!あったあった!日下部くんあった!!みつかったー!多分あっちのやつっ!」

喜びに小躍りするやよいがあっちの方へ指を指して日下部を呼んだ。
いつの間に遠くに移動していたのか、日下部からやよいがもっと小さく見えるほど離れていた。

「多分っ?てか、それ落ちたって言ってたのと全然違う場所じゃん!」

そこは最初に指して示した場所とは全く違っていて、今までの時間はなんだったんだと別の意味で力が抜けた。

「ごめんてー」

「走るなって、滑るからっ」

「大丈夫ー!」

その言葉に説得力が無いのは自覚していないのか。
ここまで来て怪我をされたらたまったもんじゃない。
考えるより先にやよいに駆け寄っていた。

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