ゆっくり、話そうか。
熱いアスファルトの上を歩きつつ、浅い策を練ったことより、友達に待ちぼうけを食らわせる神経が信じられなかった。
待ってる方の身にもなってやれといったところ。
まぁ、木陰で待っているだろうけれど、相手はやよいだ。
油断なら無い。
後先考えずに突っ走る傾向にあるため、その辺も信用ならなかった。
気が強いくせにどこか抜けている。
やよいを知ってまだ短い時間ではあるが、それくらいの事はもう見えているので、何事も起こらないうちにと先を急いだ。

夏の空気が喉をつく。
空から振ってくる太陽光線も容赦ない。
ただそこにいるだけだというのに、立っていることさえ億劫になってくる。
歩くとなるとさらに嫌気がさす。
尚太と万智が日下部邸へ来て、十数分経っている。
日下部が家を出てからも十分弱経っている。
自分が誰かを待つとしても、この時間まで待たされるとイライラして帰っているだろう。
やよいの場合それはあり得ないが、この気候で二十分以上は待つだけというストレスからもきついものがあるはずだ。
少し不安にもなった日下部は、歩くピッチを上げてアスファルトを蹴った。

なのに、

「なにやってんの、あの子」

土手の上、下の川縁を見てすぐに発見したやよい。
大人しく陰を見つけて待ってるかと思いきや、石切をしていた。
頭にタオルを巻いて。
まぁまだ日陰でやっているようなので、許容範囲内だが…。

「なんでじっとしてないの?」

やれやれと溜め息を吐き、土手を下る階段からゆっくりやよいに歩み寄る。
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