ゆっくり、話そうか。
頭の整理が追い付かない。
日下部への対応、元カノさんへの対応、今の自分への対応。

「あ、あれ?日下部くん、ど、どうしたん??や、部屋にメモ置いてるけど、もう帰るわ。なんか、もう帰るわ。えと、何て言うんやっけ、お茶ごちそうさま」

支離滅裂。
あれだけさらっと涼しげにを練習したのに、全くさらっと出来ない最悪の展開に万智も尚太も青ざめていた。
どうしたもこうしたも、お前がどうした…、尚太と万智のツッコミがエアで入る。
意味分かんないと言いながらやよいを起こし、尚太と万智にも目をやった。

なにやってんの、
君たち。

「お、お邪魔しましたぁ、じゃあまた学校でぇ」

「そ、総司っ、じゃっ、また学校でぇ」

棒読み甚だしい。
怪しいにもほどがある。
しかしもうやりきるしかない。
後戻りは出来ないのだ。
逃げるのは嫌いだ。
何があっても嫌だ。
けれど、今回ばかりは逃げ以外の手がない。
さんには抜けてしまった腰に鞭打って立ち上がると、ほぼ同時に駆け出した。

が、

「え…」

進行方向とは逆向きに負荷がかかり、やよいの体はそこに繋ぎ止められた。
自分の横を通りすぎていく二人の背中が見える。
日下部に掴まれた腕が見える。
飛び出した二人は振り返り、やよいを待つが日下部がそれを許していない。
ただならぬ雰囲気でもなく、やよい一人だけが説教されるようにも見えない。
何よりあの無駄なことをしない日下部がやよいを行かせていないのだから、きっとこれにはわけがあるのだと瞬時に判断した。
やよいに両手を合わせた万智が、あとで連絡する旨のジェスチャーをして尚太と消えた。

えっ、置いてくん!?
置いていきますの!?

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