ゆっくり、話そうか。
状況が全く読めず、痴情のもつれ的な二人と一緒に残された不安ですでに泣きそうだ。
最後まで見届けろということなのか。

鬼畜や。
あんたほんまに、鬼やで。

この空気の中で耐えられる人はいるのだろうか。
自分は今なぜ、傍聴人よろしく、二人の恋を見守らねばならないのだろう。
掴まれた腕に、元彼女の視線が集中する。
それから隠すように、日下部がやよいの腕を引いて自分の後ろへ隠した。

「言いたいことがあるなら最後まで聞くけど、何回言われても気持ちは変わらない。君と一緒に何かを試すつもりもない。前に、君に伝えてからなにも変わってない」

改めて元彼女に向き合った日下部が、少しの隙も見せない冷淡さで突き放した。
前に聞いたときとはまるで違う温度に、関係ないやよいまで胸が痛んだ。
プライベートすぎる内容にますます場違いな気持ちになってくる。

「その人と付き合うからってこと?」

「君には関係ない」

てっきり、付き合わないと、また拒否されるのだと思った。
自分もまたついでに突き放されるのだと思ったのに、そこの断言を避けた日下部に違和感を覚えた。

「君を好きになる努力をしたのは、君と付き合うと返事してしまったからその責任。俺なりに努力して向き合ったことは知ってるよね?それでも好きになれなかった俺は、まだ君に付き合わなきゃならないの??その分君は俺に何をくれるの?」

完全に突き放しにかかっている、それは疑いようがなかった。
悪趣味に覗くつもりはないので、元彼女が今どんな顔をしているかは分からないが、そうとう思い詰めているだろう。
自分の時のことを思い出してしまう。

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