ゆっくり、話そうか。
フラれた後、自分をフった相手と毎日顔を合わせることになるなど考えてもいなかった。
しかもその事に気がついたのはあの日の翌日、日下部が教室に入ってきてからだった。
何という誤算、いや、何という間抜けだろう。
居心地の悪い場所を自ら産み出してしまった。
しかし同じクラスの男子に告白し、玉砕したことはもうどうしようもない。
ならば、いてもいないものとして空気にしてしまおうとなるべく視界から外すように努めていたのだが、運がいいのか悪いのか同じキャンプ班になってしまった。

オワタ…。

班分けが決まった瞬間、真っ白になって消えてしまいたいとどれだけ願っただろうか。
しかし願いも虚しく、一泊二日のキャンプを同じ班として寝るとき以外、ずっと行動を共にすることとなったのだ。

「じゃあ次、夕食のメニュー、カレーかシチューどっちにする?」

過去の自分を呪っているとずいぶん話が進んでいて、いつ頷いたのか同意したのか、やよいは風呂掃除当番になっていた。
今は夕飯の飯盒炊飯のメニューをカレーかシチューのどちらかに絞るメインテーマに移っている。

「どっちも大して変わんないし、俺は別になんでもいいんだけど」

ペンを回し、顎を片方の手で支えたポーズになっている日下部は、投げやりさが全面にまぶされている。
全員がそろそろめんどくさくなっているのだと、中だるみの空気で感じた。

てか、いや、変わるやろ。
味覚どうした??


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