ゆっくり、話そうか。
考えるより早く手が上がっていて、周りを気にする制御が働く前に質問ですと立ち上がっていた。

「あの先生っ、バナナはおやつに入りますか!?」

担任はやよいの方を向いてすぐに放たれた質問に、「ん?は?」とやや困惑気味。
周りの生徒も面食らってやよいの方へ視線を集め、日下部もまたポカンと口を空けて見上げている。
漫画やアニメでよく聞く、バナナはおやつにのフレーズをリアルで発するやつがいるなど誰も思っていなかったため、処理するのに時間がかかったのか、どっと湧く笑い声は遅れてやってきた。
「なに言ってんの?」と怪訝な顔で日下部が漏らす。

しまった、こっそり質問しにいったらよかった。

また考えもせず突っ走ったことに早速後悔が押し寄せる。
しかし一旦口にし、こんなに注目を集めてしまっては後に引くこともできない。
もしかしたら訊きたくても訊けなくて困っていた人がいたかもしれない。
それに何より、房で売ってあるバナナをどう値段に換算すればいいのか。
一本いくらだ?割るのか?
仮にコンビニで二本買ったとしたら二百円越えとなり、残りのおやつに使えるのが100円となってしまう。
ポテチを買って終了である。
よろしくない、実に、それは、よろしくなかったのだ。

「あの、ちょっと、前、いいですか?」

担任のいる場所を指差し、二本の指で歩く仕草をしたやよいが返答も待たずにすたすたと駆け寄る。
背の高い担任に少し屈んでもらおうとジェスチャーし、手招きで近くに寄るよう合図した。
促されるまま屈んだ担任が眉を寄せて頭を傾ける。



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