ゆっくり、話そうか。
隣に座る万智には座席に座った直後、前もって寝てしまう宣言をしておいたが、まさか本気で爆睡するとは…。

「イビキとか寝言、私なんかした?」

バスが目的地に停まり、万智に起こされたやよいは寝ている間自分が粗相をしなかったか確かめる。

「すごかったよー、お腹空いたよーとかすごいしゃべってたよー」

重たい瞼が一瞬で持ち上がった。

「え、なん、私そんなこと言うたん!?」

「冗談冗談。大人しく寝てたよー」

言いながらクスクス笑い、寝相で乱れたやよいの髪を結び直した。

「もーやめてよー。びっくりしたわぁ」

「ごめんごめん」

ふんわり、これぞ癒しの塊可愛い女の子という言葉がぴったりな万智の笑顔はそこにいるだけで華がある。

果報者やな、尚太氏!
そのまま大事にしてな!

一足先にバスを降りていく尚太に、心の中で謎の激をとばす。
するとちょうどその後ろを歩いていた日下部がたまたまこちらを振り返った。
心臓が勝手に跳ねる。

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