ゆっくり、話そうか。
赤くなるからてっきり俯くと思ったのに、やっぱり目を逸らして話をしようとはしないやよいを見て、何故か日下部の方が直視できなくなってしまった。
こんなに目を見て話すタイプには会ったことがなかったし、あの件もあったりで…。

「で?どこ?落ちた場所」

「は?」

ゆっくり立ち上がった日下部を見上げ、ぽかんとする。

「探すよ、一緒に」

袖をまくり、ネクタイを胸のポケットに押し込んだ日下部が、バックパックを下ろした。
思いもよらない提案にもともと大きめなやよいの目が見開かれたる。

「えっ、嫌やで」

即座の拒絶に日下部が「はぁっ?」と漏らす。
やんわりではなくはっきりとばっさりと、こんなにくっきりバリアを張られてしまえば、しまえば、

さっきのあれなんだったんだよ。
告っといて。
そりゃ断りはしたけど、でもそんな即答あるか?
気まずいからってそんな嫌がるってなんだよ。

となるわけで。

「なんで」

となる。

「なんでて、どう考えてもじゃあよろしくとはならんよ」

本気で訊いてんのか、分かるやろ。分からんでも分かれやっ。

これがモテる奴の余裕なのかと、自分には起こり得ない状況をこっそり恨んだ。

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